イングヴェイ・マルムスティーン / ファー・ビヨンド・ザ・サン (1984)
1984年からソロ活動を開始したスウェーデン出身のギタリスト。
同年に発表された1枚目のソロアルバム[Rising Force]の2曲目に収録されています。
驚異的なスピードの速弾きによって世界中で注目を浴び、多くのフォロワーを生み出した伝説のギタリストです。
10代でスウェーデンから単身アメリカに渡り、[Ron Keel]率いる[Steeler]の一員としてレコードデビュー。
[Steeler]脱退後は、[Rainbow]や[MSG]での活動が有名なGraham Bonnet(Vo)も在籍をしていた[Alcatrazz]へと電撃加入します。
しかし、来日公演の際にポリドールからソロアルバムの制作を持ちかけられ、あっさりと[Alcatrazz]を脱退してソロデビュー。
レコーディングのためにメンバーを募集し、当時無名だった19歳のJeff Scott Soto(Vo)、スウェーデンで活動を共にしていた[Silver Mountain]のJens Johansson(Key)、[Jethro Tull]の黄金時代を支えていたBarriemore Barlow(Dr)のラインナップが揃います。
アルバムタイトルは自身がスウェーデンで組んでいたバンド名から[Rising Force]に決まり、日本国内限定でリリースされたのが本作です。
発表後すぐさまアメリカでも話題となり、全米チャートで60位にランクインしたことがきっかけで世界配給となりました。
その中から、彼の代表曲とも言える画期的なインストナンバーがこちらです。
ステージでは名刺代わりに必ず演奏されており、楽曲全体を通してテンションの高いソロが目白押しです。
[Ritchie Blackmore]や[Uli Jon Roth]を模倣としながらも、ただのコピーでは終わっていません。
スピードが速いだけではなく1音を丁寧に弾いており、メディアを騒がせる破天荒な性格からは想像できない繊細なプレイです。
感情豊かなチョーキングやビブラート。
メロディアスなフレーズの中でも瞬間的に音数を詰め込む緩急のあるプレイ。
これらを実に器用にこなします。
その驚異的なプレイに負けじと対抗するのが、Jens Johansson(Key)のシンセワーク。
スウェーデンでのアマチュア時代に[Rising Force]のバンドメイトだった彼は、Yngwieと対等以上に渡り合える天才とも呼ばれたプレイヤー。
主役は俺だと言わんばかりに凄まじいスピードで繰り出されるフレーズの数々は、ギターとのバトルで火花を散らします。
この曲で最大の見せ場は、後半のブレイクを挟んだソロパート。
呼吸すら忘れるほど音を最大限まで詰め込んだ一瞬たりとも途切れないスーパープレイ。
小節の概念すら飛び越して一心不乱に掻き鳴らされ続けます。
バックのキメが無ければ、どこを演奏しているか見失ってしまうでしょう。
極限までに張り詰めた緊張感を感じさせる名演です。
後に”ネオクラシカルメタル”と呼ばれるサブジャンルが誕生しましたが、その始祖として語り継いでも差し支えないでしょう。
また、ヘヴィメタルだけでなくゲームミュージックにも影響を与えたことでも有名です。
コナミから1987年に発売されたディスクシステム用ゲーム[ドラキュラII 呪いの封印]に使われている[Dwelling of Doom]が代表的な例です。
また、日本ファルコムから1993年に発売されたPCエンジン用ゲーム[イースIV The Dawn of Ys]に使われている[偉大なる試練]では楽曲をそのまま引用しており、制作側もやり過ぎたと反省の弁を述べたほどです。
この曲が無ければ、ゲームミュージックも今とは全く別の形になっていたかもしれません。
ジャンルを超えて音楽界に革命をもたらした名曲です。
コメント