ラプソディ / ドーン・オブ・ヴィクトリー (2000)
1993年にイタリアで結成されたシンフォニックメタルバンド。
2000年に発表された3枚目のアルバム[Dawn of Victory]の2曲目に収録されています。
オーケストラを大々的に導入し、シンフォニックメタルの新境地を切り開いたバンドです。
剣と魔法のファンタジーを題材にした物語”Emerald Sword Saga”をコンセプトに掲げ、作品を重ねると物語も同時に進行するスタイルは当時としては斬新でした。
デビューアルバムの[Legendary Tales]とそれに続く[Symphony of Enchanted Lands]はまるで映画音楽のように大仰でドラマチックな作風で、多くのヘヴィメタルファン達を虜にします。
1999年にはFabio Leone(Vo)が[Vision Divine]の立ち上げに関わったり、Luca Turilli(Gt)がソロアルバムを発表したりと活動ペースは落ちましたが、2000年から活動を再開。
その際にDaniele Carbonera(Dr)が脱退してAlex Holzwarth(Dr)が加入するメンバーチェンジがありましたが、[Sonata Arctica]と共に[Stratovarious]のサポートアクトで初めてのツアーを経験します。
ツアー終了後にはニューアルバムのレコーディングを開始し、”Emerald Sword Saga”の第3章とも言える本作を完成させました。
その中から、オープニングを飾るアグレッシブなタイトルトラックがこちらです。
過去作と比べて激しさが更に増し、物語が佳境を迎えたことを象徴する楽曲です。
テンポは大幅に上がり、メインリフもザクザクとした高速の刻みを多用するスラッシーなものに変化しました。
前作でエメラルドソードを手にした主人公の氷の勇者が、いよいよ戦いの地に赴くシーンです。
それを表現するには十分すぎるほどの熱いアンサンブルが火花を散らしています。
ここまでのアグレッションを表現できたのは、ドラマーのメンバーチェンジが大きく関係しています。
新加入のAlex Holzwarth(Dr)は前任者以上にリズムの安定感が抜群で、ツインバスの高速連打でもテンポがブレずに粒立ちの良いサウンドを鳴らしています。
同じく高速で刻まれるギターリフと混ざり合ってマシンガンのように畳み掛けてくるサウンドは圧巻です。
ドイツのプログレッシブメタルバンド[Sieges Even]で80年代から活動しており、[Angra]のデビューアルバムのレコーディングでも実力をアピールしていた名手を獲得できたのは大きな収穫でしょう。
メロディは相変わらずキャッチーで、サビでは幾重にも重ねられた重厚なコーラスワークを聞かせるRhapsodyお決まりのアレンジではありますが、オーケストレーションよりもバンドサウンドに比重が置かれた印象です。
ギターやベースは今まで以上に大きくミックスされ、ヘヴィメタルの攻撃性がより強調されています。
ファンタジーの世界観がマイナスの意味で軟弱な印象を与えてしまうバンドも少なくなかった時代ですが、そんな評価はこの曲の前ではどこ吹く風でしょう。
勝利の夜明けを確信させる、希望に満ちた名曲です。
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