【曲紹介】Tucker/Evans Tank / Honour and Blood (2010 Version)

タッカー/エヴァンス・タンク / オナー・アンド・ブラッド (2010)

1980年にイングランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
2010年に発表されたTucker/Evans Tank名義として最初のアルバム[War Machine]のボーナストラックとして収録されています。

[The Dammed]を脱退したAlgy Ward(Ba)が[Motorhead]の”Fast” Eddie Clarkeによるプロデュースで結成したバンドです。
80年代には5枚の作品をリリースしますが、商業的な失敗が原因で1989年に一度解散。
ですが1997年に復活を遂げ、2002年には[Still At War]をリリースして健在ぶりをアピールしました。
復活作の第2弾として[Sturmpanzer]のレコーディングに入りますが、その矢先に法的な問題とレコーディングのトラブルによってまたもやバンドは解散してしまいます。
その直後、なんと創設メンバーののAlgy Ward(Ba)抜きでバンドは再結成。
Mick Tucker(Gt)とCliff Evans(Gt)が中心となって[Voodoo Six]のDave “Grav” Cavill(Dr)と[Bruce Dickinson]のソロで活動を共にしていたChris Dale(Ba)を新メンバーとして迎え入れます。
シンガーの座にはなんと[Rainbow]や[Yngwie Malmsteen]との活動で知られるDoogie Whiteが電撃加入をしました。
メンバーを新たにレコーディングされた本作は、古き良きブリティッシュメタルの哀愁が炸裂する力作となりました。
その中から、1984年にリリースした4枚目のアルバム[Honour and Blood]のタイトルトラックを再度レコーディングしたナンバーがこちらです。

昔ながらの男臭さ漂う無骨でラウドなメタルサウンドを売りにしていたバンドに、全くもって方向性の違うバンドで歌っていたシンガーが加入したことは衝撃でした。
しかもバンドの代表曲として根強い人気を持つこの曲を彼が歌い直すということで、戸惑うファンも多かったと思います。
しかし、実際に音を聴いてみればそれほど悪くはありません。

がなるような歌い方で暑苦しさを演出していたAlgy Wardと、マイルドな声でコブシを効かせて歌うDoogie Whiteはそもそもスタイルが違い過ぎて比較対象にすらなっていません。
100%好みの分かれる完全な別物です。
楽曲の持つ強烈な哀愁はしっかりと健在であり、オリジナルバージョンを演奏していたMick Tucker(Gt)とCliff Evans(Gt)のコンビレーションには惚れ惚れします。
特にラストでのツインリードのハーモニーはオリジナルバージョンでは後ろに引っ込んだミックスだったのに対し、こちらでは最も目立つように仕上がっています。
もしかしたら、Algy Wardと袖を分つきっかけになったのはこの方向性の違いではないかと予想もできます。

[Motorhead]の弟分としてのTankを求めていたファンからは、大顰蹙を買うでしょう。
シンガーの歌い方もさることながら、リズム面でもガンガンと前のめりに突き進んでいたオリジナルとは程遠い緩いアンサンブルです。
強烈な後ノリの引っ張られるようなフィールは昔ながらのブリティッシュロックに寄せたのかと思うほどで、好き嫌いが分かれるところです。

ですが、オリジナルのTankにこだわりの無いメロディアスな作風を好むリスナーにとってはブリティッシュメタルの美学をこれでもかと感じることができるでしょう。
なにせ、あの伝説の[White Spirit]に在籍していたメンバーがリーダーの新しいバンドなのですから。

オリジナルバージョンと聴き比べて楽しむか、元Tankのメンバーが結成したスーパーバンドの新曲として楽しむか。
そんな意味合いでもレコーディングをした価値を感じられる名曲です。

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