ソイルワーク / フル・ムーン・ショールズ (2019)
1995年にスウェーデンで結成されたエクストリームメタルバンド。
2019年に発表された11枚目のアルバム[Verkligheten]の4曲目に収録されています。
メロディックデスメタルの代表格としてシーンの中心となって人気を集めたバンドです。
オーソドックスなスウェディッシュデスメタルをプレイしていましたが、2002年に発表した[Devin Townsend]がプロデュースをした[Natural Born Chaos]ではクリーンボイスを大幅に導入。
デスメタルからの脱却を図り、抒情的なギターワークを中心とした独自の路線へと舵を取りました。
この路線が多くのフォロワーを生み出す結果になりますが、同じような作風の作品が続く中でマンネリ化が懸念されるようにもなります。
その状況を打破せんとばかりに、叙情的なメロディを前面に押し出した起死回生の傑作アルバムを生み出しました。
その中から、マイルドで浮遊感漂うメロディラインが特徴的なナンバーがこちらです。
イントロで奏でられる都会的な雰囲気が漂うメロウなギターはインパクト絶大で、まるでAORの作品を聴いているかのような錯覚を覚えます。
デスヴォイスもほとんど使用せず、9割がクリーンボイスで歌われているため、デスメタルバンドだった頃の面影はほとんど残っていません。
サビには非常に壮大でドラマチックなメロディであり、作曲したシンガーのBjörn Stridがサイドプロジェクトとしてやっている[The Night Flight Orchestra]からの影響も少なからずあるのではないかと推測できます。
あちらは、70年代から80年代にレイドバックしたソフトなクラシックロックバンドなので、この曲の音楽性ともリンクしている部分が感じられます。
全体的にゆったりとしたミドルテンポのナンバーなのですが、エクストリーム・メタルとしてのアイデンティティもしっかりと保っています。
中間部分ではギターのザクザクした高速のバッキングやブラストビートも聴くことができますし、かといって取ってつけたアレンジではなく楽曲に自然に馴染んでいます。
あくまでも、曲を構成するストーリーとして表現できているところに長く活動しているバンドの円熟味を感じました。
作風の変貌と共に徐々に離れていったファンも少なくはありません。
ですが、初期の彼らが好きだったファンにも、メロディックな部分では十分にアピールできるのではないのでしょうか?
バンドが新しい方向性を開拓できたことを証明する名曲です。
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