ブレット・フォー・マイ・ヴァレンタイン / ノー・ウェイ・アウト (2015)
1998年にウェールズで結成されたヘヴィメタルバンド。
2015年に発表された5枚目のアルバム[Venom]の2曲目に収録されています。
2000年代以降のヘヴィメタルシーンを引っ張るバンドの代表格となった人気バンドです。
2005年のデビューアルバムをリリースしてからは世界中の音楽チャートへ顔を連ね、人気バンドへの階段を駆け上がります。
超大型音楽フェスのDownload Festival 2010ではセカンドステージでヘッドライナーに抜擢され、同年に発表した3枚目のアルバム[Fever]はBillboardチャートで3位を獲得。
アメリカでの人気も決定的なものとなりました。
前作の[Temper Temper]ではセールスが僅かに下降するも、ニューアルバムには初期2作を手がけたColin Richardsonをプロデューサーとして呼び戻します。
レコーディング中にJason “Jay” James(Ba)からJamie Mathias(Ba)へのメンバーチェンジが行われましたが、完成した本作は最高傑作と評価するファンも多くいる名盤となりました。
その中から、先行シングルにもなったキャッチーなナンバーがこちらです。
開幕一発目の絞り出すようなMatthew Tuck(Vo/Gt)のシャウトはこのバンドのトレードマーク。
激しいツインバスの連打とメタルコア風のギターリフが重なる、いつものお決まりサウンドです。
ヘヴィメタルとしての派手さは初期作に譲りますが、贅肉を削ぎ落としたシンプルなアレンジからはベテランに差し掛かった貫禄を感じます。
アグレッシヴなアンサンブルの中でもしっかりと歌を聴かせる余裕も出てきており、パートごとに表情豊かなパフォーマンスも聴けます。
Aメロでの激しいスクリーム
Bメロでの囁くようなウィスパーボイス
サビでのメロディアスに歌い上げるクリーンボイス
どのパートも余分な力が抜けているので安心して聴いていられます。
隙あらばツインリードのハーモニーを派手に奏でていたギターパートも驚くほど落ち着きました。
もちろん、攻撃的なリフや歌を支えるクリーンのアルペジオのフレーズは健在です。
ですが、アンサンブルの一部として出しゃばらない矜持を感じるプレイへと変貌を遂げています。
より大衆的に、より万人受けするように舵を切ったことで強烈な個性は無くなったかもしれません。
良くも悪くも自分たちの立ち位置を理解してスタイルを確立した節が感じられます。
ただ、好セールスを記録したことを見る限りは過去のファンにそっぽを向かれたということも無さそうです。
エクストリームな方向もメロディアスな方向も行き過ぎればファンを失うリスクを孕んでいます。
彼らはベテランバンドとしての風格と共に、良い意味で角の取れた等身大の自分たちを表現しようとしたのかもしれません。
第二のデビューを感じさせる名曲です。