ピンク・クリーム69 / スペシャル (2013)
1987年にドイツで結成されたハードロックバンド。
2013年に発表された11枚目のアルバム[Ceremonial]の3曲目に収録されています。
メロディアスな楽曲と卓越したアンサンブルで根強い人気のあるベテランバンドです。
活動初期はドイツのメロディックメタルが注目されていたこともあり、期待の新人としてセンセーショナルなデビューを飾りました。
しかし1994年にオリジナルメンバーのAndi Deris(Vo)が[Helloween]に加入するために脱退してからはヘヴィメタルのブームが去ったことでセールス面で苦戦します。
1998年にはデビュー当時のメロディアスなサウンドに回帰したことで人気は徐々に回復していきました。
それに伴い、それぞれのメンバーも優れたミュージシャンシップを発揮して個々の活動を活性化。
Dennis Ward(Ba)とKosta Zafiriou(Dr)はスーパーバンド[Unisonic]のメンバーとして活躍し、David Readman(Vo)は[Voodoo Circle]に加入するだけでなくセッションシンガーとしても引っ張りだこの存在となります。
そんな中で、Kosta Zafiriou(Dr)は自身が経営する[Helloween]のマネジメントを行う会社が多忙を極めてバンドを脱退。
後任にはDennis Ward(Ba)と[Sunstorm]で活動を共にしていたChris Schmidt(Dr)を迎えて6年ぶりのニューアルバムをリリースしました。
骨太なサウンドをメロディックに奏でる力作の中から、先行シングルにもなったキャッチーなナンバーがこちらです。
哀愁をたっぷりと含んだリードギターは、まるで80年代のアリーナロックを彷彿とさせます。
使い古されて手垢のついた展開ですが、古くからこのバンドを追いかけているファンの立場から見るとむしろ大歓迎。
活動初期から掲げているメロディックでハードなサウンドをブレなく届けてくれる安心感があります。
強烈なインパクトが無い代わりに、隙の全く無いアレンジもベテランバンドならではの魅力です。
貫禄たっぷりな熱唱を余裕たっぷりに聴かせてくれるDavid Readman(Vo)は今回も絶好調。
ハスキーでどこか影のある声質ながら、声を張り上げても押し付けがましく聴こえない優しさを兼ね備えたオールラウンドな喉はまさにこのバンドの顔と言えるでしょう。
押しと引きを自在に操るツインリードのギター陣も負けてはいません。
メロディックなイントロからドカンとヘヴィリフをかまし、そのまま繊細でエモーショナルなAメロへ移行するカラフルなプレイは職人さながら。
様々なアーティストのバックで多彩なプレイを繰り広げてきたセッションプレイヤー達が、そこで培った腕を自分のバンドで遺憾なく発揮しています。
リズムセクションの安定感はいわずもがな。
売れっ子プロデューサーでバンドのブレーンでもあるDennis Ward(Ba)はもちろん、Chris Schmidt(Dr)のプレイには驚かされました。
まるでメンバーチェンジは無かったのではと思うほどバンドに馴染んでいます。
元々はKosta Zafiriou(Dr)のドラムテックとして密接な関係を持っていた彼なので、バンドのプレイをいつも間近で見ていたのでしょう。
この曲にはこのドラムしか無いと言えるほどの心地よいビートです。
最早、どんな作品を発表するのか容易に予想ができるほどに円熟味を帯びたベテランバンド。
当たり前のように出てきたのは、ファンの求めるものを過不足なく提供できた名曲です。
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