フラットバッカー / ゲリラ・ギャング (1986)
1982年に北海道札幌市で結成されたヘヴィメタルバンド。
1986年に発表された2枚目のアルバム[餌-esa-]の1曲目に収録されています。
ジャパニーズメタルの異端児として人気を博し、全米デビューまで果たした伝説のバンドです。
1984年に発表したデモテープの[皆殺し]が札幌のライブシーンで話題を呼び、ヤマハ主催のバンドコンテストでは優秀賞を獲得。
それをきっかけにビクター傘下のInvitationと契約を交わしてメジャーデビューを果たします。
翌年に発表したデビューアルバムの[戦争-アクシデント-]はヘヴィメタルとハードコアパンク双方の魅力的な部分を濃縮したサウンドが人気を呼びました。
北海道のみならず日本全国のライブ会場でそのアグレッシブなパフォーマンスを披露したバンドは、勢いに乗ってメジャー2作目となる本作をレコーディング。
デビューアルバムに負けず劣らずの人気作となった作品から、アルバムトップを飾るスピードナンバーがこちらです。
Shoyo(Gt)によるノイジーで不協和音を含むギターサウンドと、Hiro(Dr)によるツインバスの連打がパワフルな正統派メタルドラミングが合わさってジャンルを分類するのが難しい個性的なサウンドが光ります。
前作にあった尖りの部分が更に強調されており、当時似ているサウンドを出しているバンドは皆無でした。
サウンドが破壊的なら、ヴォーカルも強烈。
凄まじいパワーを持ったダミ声を搾り出すようにしてわめくMasaki(Vo)のパフォーマンスは、有無を言わさぬ説得力があります。
サビでの『コッコッ子供が待っている』に代表される節回の独特のセンスは、当時のヘヴィメタルには存在しなかったもの。
[The Stalin]の遠藤ミチロウから多大な影響を受けたと公言しているだけあって、ハードコアパンクからの影響をひしひしと感じます。
こういったリフとリズムを中心に展開しながらも高速ビートに頼らないスタイルは[Pantera]以後の90年代に登場したニューメタルによくあるパターンでしたが、この時代にそれをやっているのは時代を先取りしていると言えるでしょう。
まだ20代前半の若者たちがこの音を出しているのですから、凄まじい才能を感じます。
後にMasaki(Vo)とHiro(Dr)は[LOUDNESS]に加入をしてこのサウンドを更にヘヴィに推し進めていきますが、それも納得のパフォーマンスです。
この翌年には[Kiss]のGene Simmonsに見出されてバンド名を[E.Z.O]と改名してアメリカ進出を果たしますが、洗練されたメタルサウンドに往年のファンは複雑な感情を抱きました。
周りのもの全てに噛み付く尖りを極めたサウンドだったこの時代には、他には代替えできない魅力があるのも事実。
その時代を象徴する歴史的名曲です。
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