【曲紹介】Angra / Evil Warning

アングラ / イーブル・ウォーニング (1993)


1991年にブラジルで結成されたヘヴィメタルバンド。
1993年に発表されたデビューアルバム[Angels Cry]の9曲目に収録されています。

[Viper]で2枚のアルバムを残して脱退したAndre Matos(Vo)が、音大でオーケストラの教育を本格的に受けた後にRafael Bittencourt(Gt)と共に立ち上げたバンドです。
メンバーチェンジを繰り返しながらもレコーディングしたデモテープの[Reaching Horizons]が話題となり、ドイツに渡って[Helloween]や[Gamma Ray]での活動で知られるKai Hansenの所有するスタジオでのレコーディングを行いました。
こうして完成したデビューアルバムは、メロディックパワーメタルにシンフォニックなエッセンスを多分に含んだ楽曲がアジアとヨーロッパで大きな話題となります。
その中から、オーケストラとの融合が特に顕著なスピードナンバーがこちらです。

曲の入りでのヘヴィメタルらしからぬ声楽のような分厚いコーラスがインパクト絶大で、これを聞くだけで一気に曲の持つ世界に引き込まれます。
インパクトの強いイントロの多いバンドですが、その最高峰に位置する名演です。

そして、この曲を語る上で絶対に外せないポイントといえば、世界的に絶大な知名度を誇るイタリアのバロック音楽作曲家であるVivaldiの「四季」のフレーズをダイナミックに取り入れているところです。
日本の義務教育でも音楽の授業で学ぶ教材にもなっているため、一度聞けば絶対に忘れることはないでしょう。

フレーズを入れる場所も、絶妙です。
中間部分でプログレッシブメタル風に展開が変化するのですが、そこにが明けて元のパートに戻ると同時にしれっとねじ込んでくるため、展開の変化に耳が向いてわざとらしさが薄まります。
こういった誰でも知っているフレーズは使い所を間違えると途端にやっつけ仕事のようになってしまうので、使い所は非常に難しいのですが、オーケストラのアレンジを学んだAndre Matosの手腕によるものでしょう。

彼の歌は、ヘヴィメタルとしての刺々しさが一切無い優しく包み込むようなハイトーンです。
そこに、語尾を裏返したり高音部のキーをわずかにずらしたりして表現の幅を広げています。
メタルシンガーのスタンダードな歌い方に慣れきったリスナーからは賛否両論が起こったものですが、改めて聞くと楽曲の雰囲気にピンポイントに声色を合わせてくる優れたテクニックを持ったシンガーだと再認識しました。

ヘヴィメタルとクラシックの融合が極めて高いレベルで完成されたパイオニア的名曲です。
メロディックパワーメタルファンばかりか、シンフォニックメタルファンも必聴です。

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