クリエイター / リッピング・コープス(1986)
1982年にドイツで結成されたスラッシュメタルバンド。
1986年に発表された2枚目のアルバム[Pleasure to Kill]の2曲目に収録されています。
同時期にデビューを果たしたSodom、Destructionと共にジャーマンスラッシュ三羽烏として日本でも人気を博したバンドです。
Tormentorの名義で発表した2本のデモ音源が話題となり、インディーズレーベルであるNoise Recordsとの契約に成功します。
Kreatorと改名して発表したデビューアルバムのEndless Painは、若さ溢れる突進力と過激性を極限まで高めたサウンドでマニアの間で人気を博します。
そのスタイルを更に突き詰め、当時はこの世で最も残虐的なスラッシュメタルとして歴史に名を残したのが本作です。
その中で、アルバムの冒頭を飾る非常にインパクトの強いブルータルなナンバーがこちらです。
本場であるアメリカのスラッシュメタルバンドよりも初期衝動に任せた過激なスタイルが特徴で、整合感を捨て去った荒れ狂う嵐のようなサウンドはインパクト絶大です。
一言で言うと、自身の演奏技術を遥かに超えたスピードに挑戦をしています。
1986年当時としては、ここまでテンポの速い音楽はおそらく存在しませんでした。
常識外れなスピードだと言われたNecrophobicが収録されているSlayerのReign in Bloodが発売されたのは、この作品の半年後です。
同郷のSodomが混沌の極みとも言える崩壊したアンサンブルで話題となったObsessed by Crueltyを発表したのも1ヶ月後。
つまり、当時のスラッシュメタルシーンで最もスピードに特化したバンドこそがKreatorでした。
あまりのスピードに、アンサンブルは成り立っていません。
出鱈目に楽器を鳴らしているだけの結果になっています。
ですが、本人達はふざけているわけではなく、至って大真面目に演奏しているのがよくわかります。
邪悪な音階のギターリフはよく考えて作り込まれていますし、ドラムもリズムがほとんど崩壊していますが、スネアの連打やタム回しのフィルインはしっかりと丁寧に叩き切っています。
出来るか出来ないかは関係なく「やる」ことに意義を持った楽曲だと思っています。
誰よりも速く演奏する目標を掲げて全力でぶつかった結果、凄まじいエネルギーを込めることに成功した良い例です。
事実、この曲から影響を受けているCannibal CorpseやVader等がデスメタルバンドの頂点に君臨しています。
彼らの作品を聴けば、ギターリフの作り方が全く同じだと気づくはずです。
整合感のある演奏では、絶対に到達出来ない領域です。
我武者羅でヤケクソなスラッシュメタルの奇跡の名曲です。
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