アンセム / オン・アンド・オン (2012)
1981年に東京で結成されたヘヴィメタルバンド。
2012年に発表された14枚目のアルバム[BURNING OATH]の4曲目に収録されています。
1985年のデビュー後、7枚のオリジナルアルバムを残すも1992年に一度解散。
2001年の再結成に際して、デビュー当時のシンガーであった坂本英三が復帰。
再び精力的な活動を続けます。
前作[HERALDIC DEVICE]発表後に、再結成後の屋台骨を支えてきた本間大嗣(Dr)が体調の問題で脱退。
サポートメンバーとして[夜叉]の田丸勇を迎えて制作された作品から、スピード感溢れるメロディアスなナンバーがこちらです。
一聴して耳を引くのが、これまで以上に熱く情熱的になった坂本英三の歌唱です。
英詩を独特の発音でまるで日本語のように歌うアクの強さと、日本語の音節やリズムをヘヴィメタルに違和感なく当てはめるセンス。
そして、狙い撃ちではなくテンションに任せてアドリブで入れているであろう強烈なシャウト。
全てにおいて過去の作品を軽く凌駕しています。
それに影響されてか、清水昭雄と柴田直人のプレイも水を得た魚のようです。
自己主張の激しいメロディアスなリフワークや、ギターソロにおけるこれでもかと連発されるクラシカルな速弾きフレーズは非常に攻撃的ですし、普段はリズムの土台になりながらもBメロで突如唸り声を上げるかのように動き出すベースプレイもテンションの高さを如実に表しています。
このエネルギーに満ち溢れたパフォーマンスのエンジンとなっているのは、間違いなくサポートメンバーとして本作から参加した田丸勇のドラムプレイです。
他のメンバー達とは15歳以上若いプレイヤーなのですが、切れ味の鋭いビートでリズムをグイグイと前に引っ張っています。
結成当時のドラマーだったMAD大内の大味で強引なプレイとも、前任の本間大嗣の一打入魂のヘヴィなプレイとも違う直線的で丁寧なドラミングです。
次の作品から正式メンバーとして迎えられる彼こそANTHEMの救世主と言えるでしょう。
地味に活躍をしているもう一人のサポートメンバーが、アレンジとシンセを担当する高濱祐輔です。
元々はゲームミュージック作家で、データイーストをはじめとした様々なゲームメーカーと関わり、柴田直人とはコナミのパーフェクトセレクションシリーズで悪魔城ドラキュラやスナッチャーの楽曲をメタルアレンジする仕事で知り合いました。
イントロやサビで彼の弾くフレーズは、この楽曲を彩るメインフレーズとなっており、サビで繰り返されるF-ZEROのBIG BLUEにも似たフレーズは、おそらく彼のアイデアでしょう。
楽曲の持つヒロイックな感覚を演出する重要なファクターとなっています。
数年後、海外デビューを果たすにあたってひとつの殻を破ったとも言える渾身の一撃です。
坂本英三は本作を最後に脱退しますが、ANTHEMに残した大きな爪痕とも言える名曲です。
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