ストームウィッチ / ザ・デヴィルズ・ブライド (2002)
1981年にドイツで結成されたヘヴィメタルバンド。
2002年に発表された8枚目のアルバム[Dance with the Witches]の5曲目に収録されています。
日本ではほぼ無名ですが、東欧地域を中心に人気を集めて息の長い活動をしているベテランバンドです。
初期は[Judas Priest]に影響を受けたサウンドでしたが、徐々にファンタジーをテーマにしたメロディアスな作風に変化していきます。
80年代後半にはハンガリーやチェコ等の東欧地域で人気が沸騰し、大規模なフェスティバル会場で多くのオーディエンスの前でパフォーマンスも行いました。
しかし、90年代に入ってトレンドの変化と共に人気にも翳りが見えてきます。
相次ぐメンバーの脱退とコンサートでの動員の落ち込みがきっかけでバンドは1996年に解散してしまいます。
その後、オリジナルメンバーのAndy Mück(Vo)はMartin Winkler(Gt)と共に作曲活動を継続。
2002年にはアルバムを発表するだけの曲数が集まったため、新たなメンバーを集めてStormwitch再結成となる本作のレコーディングを行います。
過去作と比べて最もメロディックなサウンドとなった作品は、マニアから大歓迎をもって迎えられて再結成は大成功となりました。
その中から、ケルティックなメロディに溢れたナンバーがこちらです。
正統派ヘヴィメタルバンドがここまで大掛かりにケルト民謡のメロディを取り入れることを誰が予想できたでしょうか。
それほど衝撃的な転身です。
ポピュラーミュージックでは馴染みの薄いあまりにも土着的で、悪く言えば田舎臭さが爆発したようなメロディラインが楽曲全体を支配しているのでリスナーを選ぶと思います。
ただ、同時期にヨーロッパ全土で流行したメロディックパワーメタルにおける所謂”クサメロ”と呼ばれる大仰なメロディラインを好むリスナーには魅力的な要素が満載ではないでしょうか。
低予算のレコーディングであることが伺えるチープな音質ではありますが、逆に目の前で演奏しているかのような生々しさが感じられて好感が持てます。
Andy Mück(Vo)の相変わらず不安定な音程で苦しそうに歌うパフォーマンスも親しみやすさを感じさせる不思議な魔力を持っており、ここが長年愛され続ける秘訣でしょう。
ストロングなヘヴィメタルを歌うにはあまりにも頼りない声ですが、こういう音楽性には見事に合致していると感じます。
復活したバンドが新境地を開拓したように紹介しましたが、実は過去にも似たようなメロディを使ったケースはいくつかあります。
80年代には同郷の[Runnning Wild]が[Riding the Storm]で、90年代にはスウェーデンの[Hammerfall]が[The Dragon Lies Bleeding]で同じ属性のメロディラインを多用して人気を博しました。
ただ、ここまで狙ったかのように民謡のカラーを濃くしたバンドアレンジは当時としては珍しいものでした。
一部のマニアにしか知られていないマイナーバンドの中でも、特に知名度の低い作品の楽曲です。
ですが、鼻が曲がるほどの”クサメロ”を追い求めるマニアにとってはこれ以上ない掘り出し物ではないでしょうか。
辺境民謡メタルマニアにも十分にアピールのできる名曲です。
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