シナー / エメラルド (1985)
1982年にドイツで結成されたヘヴィメタルバンド.
1985年に発表された4枚目のアルバム[Touch of Sin]の2曲目に収録されています。
[Primal Fear]での活動が有名なMat Sinner率いるベテランバンドです。
自主制作で2枚のデモ音源(後にレーベルがバンドに無断でアルバムとしてリリース)した後、地元のNoise Recordsと契約をして1984年に[Danger Zone]をリリース。
パワフルなメタルサウンドの中にも哀愁のメロディが散りばめられた作品は、マニアの間で話題となりました。
それに続く本作はギタリストに[Accept]を脱退したばかりのHerman Frankを、ドラマーに[Fargo]や[Victory]で活動していたBernie Van Der Graafを迎えて制作されました。
前作よりもツインリードの美しいハーモニーが強調されており、バンドの代表作として時代を超えて愛されています。
その中から、哀愁のメロディが特に強力な人気曲がこちらです。
ヨーロッパのバンドの持つ湿った雰囲気が曲全体に現れており、シャッフルのリズムと相まって80年代のヘヴィメタルを象徴するようなサウンドです。
ツインバスの連打を多用したドラムソロから始まるドラマティックな展開は、ストレートな曲調を売りにしていた前作での彼らとは一線を画しています。
Bernie Van Der Graafのテクニカルなプレイがバンドに新しい風をもたらしました。
ツインリードのハーモニーを強調しているギターリフも秀逸。
元々[Thin Lizzy]からの影響を公言していましたが、ここにきて楽曲面でもその影響を全面に押し出すようになっています。
シンプルな単音リフをインパクトのあるものにするため、2本のギターでハーモニーを奏でるのは[Thin Lizzy]の得意技でした。
ここまで忠実に再現してくれると、溢れ出んばかりの愛情が伝わってきます。
特に、サビでのカウンターメロディは素晴らしい出来です。
歌のメロディに合いの手のように入るハーモニーは、この曲の持つ凄まじい哀愁を更に高めてくれます。
Mat Sinnerは決して上手いシンガーではないのですが、絞り出すようなハスキーボイスは非常に味わい深いものです。
湿ったメロディの持つ儚い雰囲気を見事に表現するパワーを感じます。
アンダーグランドな雰囲気とメロディの親しみやすさが見事なバランスで成り立っています。
80年代中盤のドイツのメタルシーンの中ではトップクラスにメロディアスな名曲です。
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