カサノヴァ / チケット・トゥ・ザ・ムーン (1992)
1990年にドイツで結成されたハードロックバンド。
1992年に発表された2枚目のアルバム[One Night Stand]の2曲目に収録されています。
[Mad Max]での活動が有名なMichael Voss(Vo/Gt)と[Warlock]のMichael Eurich(Dr)を中心に結成されたバンドです。
前年にメジャーレーベルのWMAより発売されたデビューアルバムが地道なツアー活動によりヨーロッパ全土で20万枚を売り上げ、新人バンドながらも注目株となりました。
これによってレーベルから更なるバックアップを受けて、よりアメリカナイズドされてメインストリーム寄りの作風の本作をレコーディングします。
ですがヨーロッパ人としてのフィーリングは隠せなかったのか、全体的にほのかな哀愁がバランス良く融合された傑作となりました。
その中から、優しく包み込むメロディが印象的なバラードがこちらです。
オリエンタルで浮遊感のある雰囲気に包まれており、まさに曲のタイトルをよく表しています。
1番ではアコースティックギターの柔らかいバッキングと甘く囁くようなMichael Vossの声と共に正統派のバラードナンバーとして展開していきます。
サビBメロからMichael Eurichのパワフルなビートが現れ、開放感たっぷりのサビに移る展開は予定調和ではありますが胸を熱くさせる黄金のパターンです。
印象が大きく変わるのは2番から。
これまで穏やかに歌っていたMichael Vossはどこへやら、雄猫の鳴き声にも似たハスキーでソウルフルな熱唱が楽しめます。
前半は優しく歌っていた分、静と動の素晴らしいコントラストが生まれて彼の魅力が際立っているように感じました。
何よりも魅力的な部分はサビのメロディライン。
優しさと開放感の中にほのかに漂う哀愁が素晴らしいバランスです。
哀しいメロディでもないのに、どこか甘酸っぱくロマンチックな響きはこのジャンルでは聴ける機会は少なく思います。
アメリカのメインストリームに寄りながらも、ヨーロピアンな質感が自然に混ざり合っている恒例です。
間奏でのアジアンテイストな雰囲気は[Led Zeppelin]からの影響も強く感じました。
エフェクトをたっぷり効かせたサイケデリックなサウンドは、まるで無重力空間にいるような幻想的な世界を醸し出しています。
70年代のブリティッシュロックをリスペクトする精神の現れでしょう。
残念ながら日本では同時期にデビューした同じドイツ出身の[Fair Warning]に人気を阻まれてセールスは成功したとは言えません。
ですが、メロディアスハード創世記に名を残す隠れた名曲と言えるでしょう。
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