ヘヴィ・ロード / ヘヴィ・メタル・エンジェルズ (1983)
1976年にスウェーデンで結成されたヘヴィメタルバンド。
1982年に発表された2枚目のアルバム[Death or Glory]の1曲目に収録されています。
スウェーデンにおける最初のヘヴィメタルバンドとして知られ、ヴァイキング神話に基づいたテーマを掲げた楽曲を多数発表したことにより、ヴァイキングメタルの始祖とも呼ばれています。
結成当初はブリティッシュロックからの影響が大きいオーソドックスなハードロックを演奏していたのですが、1981年に発表したEPの[Metal Conquest]でヘヴィメタルバンドとしてのアイデンティティを確立。
ファンからの期待を背負って発表したフルアルバムからの、バンドの代表曲とも言える人気ナンバーです。
イギリスで巻き起こっていたNWOBHMのムーブメントに多大な影響を受けたと思われる、非常にシンプルなリフで無骨に攻めるスタイルですが、一聴して耳に飛び込んでくるのがヴォーカルの声です。
楽曲によって3人のメンバーが持ち回りでヴォーカルを担当するのですが、この曲を歌うバンドリーダーでありギターとキーボードを担当しているRagne Wahlquistのスタイルがとにかく強烈。
声を張り上げて熱唱するスタイルは、声質だけでインパクトが絶大です。
そればかりか、力みが過ぎてリズムや音程おかまいなしになる部分も気になります。
ただ、決して不快なわけではなく、情熱はスピーカーを通して伝わってくることも確かです。
ジャケットに映る斧で白熊と闘う北欧の戦士が歌っているかのような情景が浮かんでくる、不思議な魅力を持っています。
そして、この曲の最も重要なハイライトは、中間部分のドラマチックで幻想的なパートです。
切ないピアノのバッキングに合わせて、繊細でブルージーな泣きのギターソロが何の脈絡もなく鳴り始めます。
これまで、美しさとは無縁の野暮ったいプレイを散々聞かせられた挙句に、ここまで落差の激しい展開を聴かされたインパクトは、聴いてはいけないものを聴いてしまった罪悪感すら覚えます。
ギターのプレイがどこまでもエモーショナルで、咽び泣くようなトーンを丁寧に弾いているところも、未開人のようなヴォーカルスタイルと相まって凄まじいギャップです。
一度聴いてみないとこの感覚は到底味わえません。
北欧メタルとしての美しさと、70年代を引きずった泥臭いヘヴィメタルとで苺大福のような素晴らしいミスマッチを作り上げた歴史的名曲です。
マニアは絶対に聴くべし!
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