【曲紹介】Black Sabbath / Zero the Hero

ブラック・サバス / ゼロ・ザ・ヒーロー (1983)

1968年にイングランドで結成されたハードロックバンド。
1983年に発表された11枚目のアルバム[Born Again]の5曲目に収録されています。

重く引きずるような重低音のギターリフにより、後にヘヴィメタルが発展する基礎を作り上げた偉大なバンドです。
[Ozzy Osbourne]に代わって[Rainbow]から移籍したRonnie James Dioは、2枚のアルバムを残して自らのバンド[Dio]を結成するためにVinny Appice(Dr)を引き連れて脱退してしまいます。
空中分解してしまったバンドは一度解散を決意し、再出発を図るためにメンバーを探し始めました。
そんな中で[Deep Purple]の活動で有名なIan Gillan(Vo)と飲みの席で意気投合。
新プロジェクトでアルバムを1枚レコーディングすることになったので、アルコール依存症から回復したオリジナルメンバーのBill Ward(Dr)を呼び戻します。
レコーディングを無事に済ませて後はバンド名を決めてリリースするだけの状態になった段階で、マネジメント側が完成した作品をBlack Sabbathのニューアルバムとしてリリースする契約書をメンバーの許可を得ずに作成。
そのためにバンドのカタログの中では過去の作風とは一風違ったものになりながらも、ファンの間では隠れた名作として語り継がれる作品となりました。
その中から、最もダークな部分が強調されているスローナンバーがこちらです。

多くのファンがBlack Sannathに対してイメージする”重く引きずるようなヘヴィリフ”を余すことなく濃縮したサウンドです。
まるで地獄の底へといざなうような邪悪で閉塞感のあるサウンドには恐怖すら覚えました。
言語に絶するホラーサウンドを演出するシンガーが[Ozzy Osbourne]ではなくIan Gillanだという事実は、この曲がBlack Sabbathとは違うバンドのために作られたものだと実感させられます。

[Deep Purple]で慣れ親しんだあの声がそのままホラーサウンドの上に乗っているのを聴いて面食らったファンも多いでしょう。
ですが、能天気で他人事のような雰囲気すら感じる声質は、見方を変えれば苺大福のような面白味があります。
軽く目眩すら覚えるミスマッチですが、ここまで徹底してくれる潔さには脱帽です。

この曲の雰囲気を演出するのに必要不可欠な要素が、過剰にリバーブのかかったミックスです。
特に遠くから鳴り響いているようなベースとドラムは、リスナーを異次元へといざなう魔法のようなサウンドです。
実際にはメンバーが立ち会っていない状態で勝手にミックスとマスタリングがされており、あまりの酷さに憤慨したというエピソードが語られています。
ですが、この曲に関しては雰囲気作りとしては怪我の功名どころか大成功なのではないかと感じます。

発表当時はBlack Sabbathのニューアルバムを期待したファンからの落胆の声をもって迎えられました。
しかしその数年後にデスメタルのムーブメントが巻き起こった際、多くのバンドがこの曲持つ地獄へ引き摺り込まれそうな邪悪な雰囲気を踏襲しました。
デスメタルのプロトタイプと呼んでも過言ではない、歴史的価値のある隠れた名曲です。

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