エフエム / バッド・ラック (1989)
1984年にイングランドで結成されたハードロックバンド。
1989年に発表された2枚目のアルバム[Tough It Out]の3曲目に収録されています。
ソウルフルな甘い声とブリティッシュロック特有の哀愁が人気のベテランバンドです。
[Samson]を脱退したMerv GoldsworthyとPete Juppの2人が元[Wildlife]のOverland兄弟、[The Invaders]のDigi Digitalと合流して結成されました。
デビューアルバムの[Indiscreet]はアメリカンなサウンドに英国特有の憂いのあるメロディが融合され、セールスに恵まれます。
更なる飛躍のため、プロデューサーのNeil Kernonと手を組んでレコーディングに臨みます。
前作から3年ぶりに発表された本作は、よりハードなサウンドでメインストリームに寄ったサウンドとなりました。
その中から、バンドの代表曲となった哀愁漂うミドルナンバーがこちらです。
外部ソングライターに[Kiss]、[Bon Jovi]、[Aerosmith]等のヒット曲を数多く手がけたDesmond Childを招いている影響で、彼の手がけた他の楽曲と酷似したアレンジに仕上がっています。
曲展開は[You Give Love a Bad Name]を殆どそのまま流用しており、第二章と呼んでも差し支えありません。
ですがバンドの持ち味はしっかりと残っています。
この曲の個性を決定付けているのは、シンガーのSteve Overlandです。
[Free]や[Bad Company]で活躍したPaul Rodgersとよく似たソウルフルで甘い声をしており、英国特有の憂いのある雰囲気を感じます。
喘ぐように歌う色気のある発声は、これだけで曲全体を彼の色に染めてしまうほどの破壊力です。
彼の声を中心に作られたのか、演奏面でも湿った雰囲気が随所に表れています。
イントロの美しいツインリードのハーモニーからは[Wishborn Ash]からの影響が伺えますし、ギターソロ後のクリーンギターとシンセの音作りから滲み出る暗さは狙っているとは思えません。
アメリカでのヒットを狙いながらも、内面から滲み出るブリティッシュロックの質感が絶妙なバランスで成り立っています。
双方の良い持ち味が見事に融合された、メロディアスハードロックを代表する名曲です。
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