【曲紹介】Accept / Fast As A Shark

アクセプト / ファスト・アズ・ア・シャーク (1982)

1976年にドイツで結成されたヘヴィメタルバンド。
1982年に発表された4枚目のアルバム[Restless and Wild]の1曲目に収録されています。

ドイツのヘヴィメタルシーンの先頭に立ち、発展の基礎を作り上げたベテランバンドです。
デビュー当初はマイナーレーベルでの活動をしており、[AC/DC]の作品を手がけたGeorge Youngがプロデュースした[I’m a Rebel]もセールス面で失敗をしてしまいます。
ですがその失敗を糧にストロングなヘヴィメタルサウンドへと方向性を変え、本当にやりたいことを妥協せずに追求して制作した[Breaker]は世界中のマニアから大歓迎をもって迎えられます。
その成功によって[Judas Priest]のワールドツアーのサポートに抜擢され、初めて国外のツアーを経験しました。
自分たちの選択は間違っていなかったと確信したバンドは、更に強力なヘヴィメタル作品を作るべくレコーディングを開始。
その際にJörg Fischer(Gt)がJan Koemmet(Gt)と交代するトラブルにも見舞われましたが、最終的には彼も脱退してHerman Frank(Gt)がメンバーに落ち着きます。
全てのギターパートをWolf Hoffmann(Gt)が1人で担当した本作は、ドイツのヘヴィメタルを代表する後世に語り継ぐべき名盤となりました。
その中から、スピードメタルのスタイルを作ったとも言える強烈なナンバーがこちらです。

プロデューサーのDieter Dierksが10歳のに歌った民謡のレコードが流れ、スクラッチ音と共に[Udo Dirkschneider]の凄まじいシャウトが炸裂するイントロはインパクト絶大。
そこからザクザクと刻まれるギターリフとStefan Kaufmann(Dr)の怒涛のツインバス連打が絡むアレンジには当時どれだけのリスナーが衝撃を受けたでしょうか。
まだスラッシュメタルも存在しなかった時代です。
前作のタイトルトラックである[Breaker]も高速ツインバスの連打をフィーチャーしていましたが、それを遥かに超えるスピードです。
それをほんのわずかなテンポの狂いもなく叩き切る鬼神の如きプレイは、多くのメタルドラマー達のお手本となりました。

また、サビが非常にキャッチーなことも大きな特徴です。
[Udo Dirkschneider]の強烈な濁声でわめくAメロと、重低音響くバックコーラスに合わせて高らかに歌い上げる勇猛なサビはまるで軍歌のよう。
後に多くの評論家が『ジャーマンメタルらしいキャッチーなメロディ』という表現を使いますが、間違いなくこの曲がそのスタート地点です。

そして、クラシックをこよなく愛するWolf Hoffmann(Gt)が弾くメロディアスギターソロも大きな聞きどころです。
重厚な低音を強調したメロディから徐々にテンションが上がっていき、オーバーダビングで美しいハーモニーを奏でる展開は[Judas Priest]の[Exciter]からの影響が色濃く出ています。
ハードロックからヘヴィメタルへ移行する過程の名曲を参考に更にヘヴィな部分を強調してブラッシュアップされており、伝統を守りつつも新たな要素を取り入れようとするチャレンジ精神がよく伝わってきます。
この手法を真似たバンドは星の数ほどいるので、後追いで聴いたリスナーにとっては原点を知ることができる古典とも言えるでしょう。

後にパワーメタルやスピードメタル等のスタイルが生まれましたが、間違いなく雛形を作ったのは彼らです。
今後もヘヴィメタルのクラシックとして語り継がれるであろう歴史的名曲です。

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