ヴィシャス・ルーマーズ / ユー・オンリー・リヴ・トゥワイス (1991)
1979年にカリフォルニア州で結成されたヘヴィメタルバンド。
1991年に発表された4枚目のアルバム[Welcome to the Ball]の2曲目に収録されています。
40年以上の歴史を誇るUSメタルを代表するベテランバンドです。
元々はVinne Mooreをメンバーに添えて彼を売り出すためにShrapnel Recordsよりデビューしましたが、彼はすぐにソロ活動のために脱退。
残されたバンドはメンバーチェンジを挟みつつ、足枷が取れたことでより精力的にツアー活動を始めます。
1990年にAtlantic Recordsと契約して発表したメジャーデビュー作[Vicious Rumors]は、[Don’t Wait for Me]のMusic Videoがヘヴィローテンションされて人気に火が付きました。
勢いに乗って発表した本作は、地元サンフランシスコのBay Area Music Awardsで[Metallica]や[Tesla]と共にBest New Metal Albumにノミネートされ、最高傑作と称するファンも多くいる名盤となりました。
その中から、ライブで披露されることも多いスピードナンバーがこちらです。
クリーンギターが奏でるお洒落なリフから一転、急加速するようにテンポアップする展開には驚かされます。
メトロノームを用いずに全員が一斉に演奏をするライブレコーディングの形式でないと出せないフィールこそ、このバンドの魅力です。
パワーメタルには珍しい浮遊感のあるコード進行を中心に展開しており、お決まりの展開やよくあるキャッチーなメロディラインは殆ど出てきません。
それでいてリスナーの心をガッチリ掴んだのは、バンドの持つ底力でしょう。
フロントマンのCarl Albert(Vo)によるパワフルな濁声からよく伸びるハイトーンまで使いこなす変化自在のパフォーマンスは圧巻。
リフに寄り添ったメロディラインを歌っているだけなのに、インパクト絶大な声質と表現力をもって全てをねじ伏せるかのようです。
この曲を表現するのに必要な全てを持っているかの如くです。
そして、屋台骨を支えるLarry Howe(Dr)の叩きつけるようなドラミングも負けじと強烈。
熊のような体躯で繰り出すパワーに満ちたスネアの一撃は、バシバシと体に響いてきます。
スピード感抜群で体が思わず前のめりになる活きたビートも魅力的です。
メトロノームに合わせてキッチリ合わせてくるドラマーでは出せないドタバタしたフィールは、このバンド最大の個性と言っても過言ではありません。
そんな彼が暴走せずにタイムキープができるのは、楔をきっちり打ち込むDave Starr(Ba)の職人的ベースプレイのおかげです。
Larry Howeの繰り出す一番気持ちの良いポケットにアクセントを合わせ、その他のところでは重低音で彼を引っ張りギターリフとの橋渡しを適切に行います。
地味なプレイではあるのですが、ヘッドフォンなどで低音に集中して聴いてみるといかにバンドのサウンドを引っ張っているかがよくわかります。
JazzやFusionの要素を取り入れ、かといってそれを決して全面に出さずにパワーメタルサウンドに溶け込ませているのは見事。
ギターソロをよく聴くとヘヴィメタルらしさは殆ど感じられないのに、それをあたかも『これしかない』と説得力を持たせるセンスは目を見張るものがあります。
90年代前半はヘヴィメタルにとって大きな転換期を迎えた時代でした。
その中でも他のバンドとは一味違ったお洒落な個性を発揮している名曲です。
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