【曲紹介】Fate / (I Can’t Stand) Losing You

フェイト / ルージング・ユー (1986)

1984年にデンマークで結成されたハードロックバンド。
1986年に発表された2枚目のアルバム[A Matter Of Attitude]の3曲目に収録されています。

音楽性の相違を理由に[Mercyful Fate]を脱退したHank Shermannによって結成されました。
サタニックなコンセプトにテクニカルなアンサンブルで人気を博した[Mercyful Fate]とは180度異なるメロディアスなアリーナロックは、多くのファンから困惑ともって迎えられます。
しかし、メジャーレーベルのEMIと契約を交わして発表したデビューアルバム[Fate]はアメリカでのヒットを意識したキャッチーな作風である程度のセールスに恵まれました。
その勢いに乗り、よりシンセのサウンドに比重を置いて作られたのが本作です。
その中から、北欧のバンドらしい哀愁が人気のナンバーがこちらです。

シンセを主体としたアレンジとなっており、イントロから哀愁漂うフレーズが大音量で響き渡ります。
無国籍なメロディアスロックだった前作に対し、こちらは北欧ハードポップの王道を行くサウンドです。
スウェーデンの[Europe]や[Treat]にも通じるものがありますが、こちらは更に煌びやか。
過剰とも言える装飾が、一周回って心地よさを感じます。

楽曲の主役であるシンセに対して、ギターは明らかに裏方です。
完全に奥に引っ込んでおり、意識をしなければ聞こえないほど。
これは、サビでの分厚いコーラスやゲートリバーブを深く欠けた派手なドラムサウンドが要因でもあります。
ですが、普段は脇役とはいえ花形楽器。
ギターソロではしっかりと派手でメロディアスなプレイを聴かせてくれます。

それにしても、凄まじい哀愁です。
シンセは透明感のある音色をチョイスしており、マイナー調のコードとの親和性はバッチリ。
今にも消え入りそうなメロディを歌うシンガーも、声が細くロック向きでは無いながらも楽曲によく合う甘い声です。

ここまで北欧らしいハードポップに傾倒したのも、おそらく理由があります。
本作が発売される数ヶ月前に[Europe]が[The Final Countdown]で全米を制覇しました。
ギターソロ前の間奏でシンセの音色やフレーズに、影響が見え隠れしています。
同じ北欧出身のバンドとしてライバル意識が芽生えたことは想像に難くありません。

セールス面では大きな結果を上げることはできませんでしたが、バンドとしての方向性が定まる結果となりました。
シンセを主体とした哀愁の北欧ハードポップを代表する名曲です。

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