ドリーム・シアター / エロトマニア (1994)
1985年にアメリカのボストンで結成されたプログレッシヴメタルバンド。
1994年に発表された3枚目のアルバム[Awake]の4曲目に収録されています。
前作の[Images & Words]は、[Rush]のプログレッシヴな側面と[Metallica]や[Magedeth]等のスラッシュメタルの側面を見事に融合させ、バンドの代表作と言えるほどの大ヒットを記録しました。
それに続くヒット作にするようにとレコード会社からのプレッシャーに晒されながら制作された作品は、当時のメインストリームであったオルタナティヴメタルに影響され、バンドの持ち味であるテクニカルで複雑な曲展開はそのままにダークでヘヴィな側面が強調されていました。
その中でも特に退廃的な雰囲気の漂うインストゥルメンタルナンバーがこちらです。
まるで酸素のない宇宙空間に放置されたかのような退廃的な気分になるオルガンのサウンドと、5/8拍子や7/8拍子など奇数割りの拍子が目まぐるしく入れ替わるダークでヘヴィなギターソロで曲がスタートします。
その不安定なコード感は、精神が錯乱している様子が的確に表現されています。
初期[Yes]や中期の[King Crimson]に代表される複雑怪奇を見事に体現した展開に、ダウンチューニングした邪悪な雰囲気すら感じるギターリフを重ねたプログレッシブロックを1990年代風に解釈したような新しいスタイルを生み出しました。
ですがダーク一辺倒ではなく、中盤に差し掛かるにつれて徐々に透明感のあるシンセのサウンドが増えていき、何かから解放されつつある雰囲気へと変化と遂げていきます。
そして、突如前向きで希望を感じるコード進行となり、精神の安定が訪れたかのような穏やかな曲調が顔を出します。
しかしそれも長くは続かず、徐々に徐々にと元のダークな曲調へと戻っていき、その途中では脈絡もなくクラシカルなフレーズや無理やりとってつけたよなテクニカルなキメのフレーズが節操なく入り込んで来ます。
そうして、曲の始まりで聴かれる狂気に満ち溢れたおなじみのフレーズに戻り、組曲形式で次曲のVoiceへと移行します。
何故このような奇妙奇天烈なアレンジになったかと言うと、過去の楽曲の没になったフレーズをパッチワークのように張り合わせて作られたからだそうです。
それを、曲として成り立たせるために順番を入れ替えながら構築していったとのこと。
この話を聞いた際は、これこそMottainaiの精神を大切にするプログレッシヴな作曲方法だと目から鱗が落ちました。
そして、それを一糸乱れぬアンサンブルで見事にやり抜くメンバーの技量にも脱帽です。
POPやキャッチーとはかけ離れたカオスの世界になりますが、最高傑作に挙げられることもある名盤のイメージを最も的確に表していると感じました。
バンドの持つプログレッシヴでテクニカルな側面を余すことなく伝えることのできる名曲です。
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