【曲紹介】Giant / I’ll See You In My Dreams

ジャイアント / アイル・シー・ユー・イン・マイ・ドリームス (1989)

1987年にアメリカのテネシー州で結成されたロックバンド。
1989年に発表されたデビューアルバム[Last of the Runaways]の4曲目に収録されています。

80年代のヒット曲において、膨大な数の作品にプロデューサーまたはギタリストとしてクレジットされていたDan Huff。
そして、[Tony Williams Lifetime]への参加を皮切りに、JazzからFusion、AORなどのシーンで活躍したセッションキーボーディストのAlan Pasquaの二人が中心になり結成されました。
著名なメンバーが複数いることから契約はトントン拍子に進み、間も無くA&M Recordsよりデビューアルバムをリリース。
高度な演奏技術を持っていながら、それを前面には出さないシンプルでメロディアスなハードロックサウンドは、時代のトレンドと相まって多くのリスナーからの絶賛を浴びます。
その中から、全米チャート20位のバンド最大のヒットを記録した哀愁漂うバラードナンバーがこちらです。

80年代末期のヒットソングを象徴するかのような王道のパワーバラードに仕上がっており、Dann Huffのソウルフルで感情豊かな歌が楽曲に彩りを与えています。
普段はギタリストでの活動が多い彼ですが、歌わせてみると実にマイルドで楽曲に合う素晴らしい声だと改めて実感しました。
自慢の歌声を披露するチャンスに恵まれなかったフラストレーションを発散しているかのように、活き活きとしたパフォーマンスです。

静かなイントロから徐々に盛り上がり、サビでバンドがインする展開は映画のサウンドトラックを聴いているかのようです。
最高潮まで盛り上がらずに60%程度で抑えておき、ギターソロあたりで80%まで持っていった後に最後のサビで100%を解放して転調をする展開は、大ヒットバラードの教科書と言えるのではないでしょうか。
あまりに多くの曲で使われた手垢だらけの技法で食傷気味になっているリスナーも多いとは思いますが、予定調和の清々しいカタルシスが味わえます。

こういう楽曲は、たったの6小節しか無いギターソロだって一切手を抜きません。
サビのメロディラインを忠実になぞるだけの極めてシンプルな中で、ビブラートやチョーキングを駆使して歌うように感情を表現しています。
まるで美しく舞うようなプレイには第一線で活躍を続ける彼の職人技が詰まっており、ギターソロを歌の延長として自在に操る名演です。

これだけの名曲を作っておきながら、トレンドが変化によりメロディアスなハードロックはセールス苦戦を強いられます。
そして、中心メンバーたちが裏方の仕事で多忙を極めてしまったことによりバンドの活動は徐々に先細りとなっていきます。
時代さえ間違えなければコンスタントに活動ができ、第2の[TOTO]として多くのファンを獲得できたのではないでしょうか。

ハードロックがヒットチャートに登り詰めた最後の時代を象徴するパワーバラードの名曲です。

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