【曲紹介】Warlord / Lost And Lonely Days

ウォーロード / ロスト・アンド・ロンリー・デイズ (1984)

1980年にアメリカのカリフォルニア州で結成されたヘヴィメタルバンド。
1984年に発表されたシングル[Lost and Lonely Days / Aliens]のA面に収録されています。

アメリカ出身ながら、ヨーロピアンな雰囲気が漂う旋律でカルトな人気を誇ったバンドです。
サン・ノゼで知り合ったDestroyer(Gt)とThunder Child(Dr)が自分たちの理想とするバンドを結成すべくメンバー集めのためにロサンゼルスへ移住。
幾度かのメンバーチェンジの末にDamien King(Vo)とSentinel(key)が加入します。
ちょうどヨーロピアンなヘヴィメタルを演奏するバンドを求めていたMetal Blade Recordsが彼らに興味を持ち、コンピレーションアルバムの[Metal Massacre II]と[Metal Massacre III]へ参加。
アンダーグラウンドで大きな話題となった彼らは、記念すべき6曲入りのデビューアルバム[Deliver Us]をリリースします。
冷たいダークなメロディに溢れた作風は、ライブを一度も行ったことが無いにも関わらず多くのマニアを熱狂させました。
その人気に驚いたレーベルが新たに新曲をシングルとしてレコーディングするようにとバンドに指示。
急拵えで完成させたにも関わらず、強烈な哀愁を保つメロディックメタルサウンドはファンたちを満足させる内容となりました。
その中から、非常に人気の高いナンバーがこちらです。

凄まじい哀愁を放つ冒頭のメロディラインが全力でリスナーを篩にかけてきます。
よくぞやってくれたと手をあげて喜ぶ者、洗練とは程遠い赤面必至のメロディに嫌悪感を抱く者。
マイナーでカルトなヘヴィメタルは、このくらい極端な方がいいのです。
何よりも、[Deliver Us]でこのバンドのファンになった者ならば間違いなくその素晴らしさに身悶えすることでしょう。

哀愁を通り越して寂しさや虚無感すら漂う旋律は、DestroyerことWilliam J Tsamis(Gt)によるもの。
ギリシャ人の家系に育ち、ギリシャの音楽をこよなく愛する彼が奏でるサウンドは独特です。
欧米やアジア圏ではあまり馴染みの無いギリシャ音楽ですが、ほのかにエキゾチックな雰囲気が漂う怪しげなメロディとヘヴィメタルとの相性は思いのほか良好でした。

Destroyer(Gt)の思い描く世界観を完璧に表現していると言われるDamien King(Vo)のパフォーマンスも見事なものです。
抑揚をできるだけ抑えてメロディラインをなぞる歌い方は、楽曲の持つ冷え切った雰囲気そのもの。
まるで歌詞を朗読の朗読か、または魔術師が呪文を詠唱しているようにも聞こえます。
このスタイルは[Hammerfall]のJoacim Cansにも大きな影響を与え、再結成したバンドに彼が参加するきっかけにもなりました。
ライブのステージに立つだけの力量が無いためにバンドを去ることになってしまいましたが、レコーディングにおいてはバンドとの相性は満点と言っていいでしょう。

Thunder Child(Dr)の手数足数を詰め込んだテクニカルなドラミングもこのバンドの個性です。
ドタバタと落ち着きのないプレイにも聴こえますが、淡色で極めて地味とも言える楽曲を鮮やかに彩る重要なファクターだったりします。
ここでシンプルなプレイをしてしまうと、メロディアスなだけの地味な楽曲になってしまうことは必至。
曲の雰囲気を壊さないギリギリのところで踏みとどまったプレイはまさに職人技です。

“恥ずかしくて聴いていられない強烈なクサメロ”をここまで堂々とやってくれるのは、マイナーメタルを愛するファンとしては嬉しい限り。
どれだけ時が経っても語り継がれる永遠の名曲です。

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