220ボルト / アイ・トゥ・アイ (1988)
1979年にスウェーデンで結成されたヘヴィメタルバンド。
1988年に発表された4枚目のアルバム[Eye To Eye]の4曲目に収録されています。
デビュー作からスウェーデンではメジャーレーベルよりリリースされ、作品を重ねる度に国内での人気は上昇。
1986年に同期の[Europe]が[The Final Countdown]で世界中の音楽チャートを制覇したのに触発され、全米デビューを目論みます。
プロデューサーには当時[Ozzy Osbourne]や[LOUDNESS]を手がけていたMax Normanを迎えてアメリカでのレコーディングに乗り出します。
かつてないほど洗練されたメロディ重視のサウンドは、セールスこそ成功とは言えないものの北欧メタルのマスターピースとしてマイアの間で愛され続ける名盤となりました。
その中から、ミドルテンポの哀愁漂うタイトルトラックがこちらです。
リバーブをたっぷりかけて奏でられるギターのアルペジオは、まさに多くのリスナーが抱いている北欧メタルのイメージそのものです。
前作までNWOBHMに影響を受けたストロングなヘヴィメタルを演奏していたバンドとは思えません。
明らかに世界でのヒットを狙った当時としては非常にスタイリッシュなサウンドへと大変身を遂げています。
その舵を握っていたのがプロデューサーのMax Normanです。
1985年に[LOUDNESS]が[Thunder In The East]でアメリカ進出を果たした際には、バンドのサウンドをテクニカルな演奏を一切排除した極限までシンプルなものに仕上げました。
今回もそれと全く同じ手法でアレンジがされています。
歌をとにかく引き立てるように余計な装飾は外され、伴奏に徹する楽器陣。
Max Normanの鬼のようなディレクションが瞼に浮かんできます。
ただ、楽曲の持つ哀愁をしっかりと引き出せているセンスも見事です。
Peter Hermansson(Vo)は線が細く音程が安定しているシンガーではありませんが、ハイトーンになった際の絞り出すように発する甘い声は北欧らしい抒情的なメロディを表現するにはピッタリです。
サビで絡み合うコーラスワークも含めて、彼の持ち味が非常によく出ています。
また、要所要所で味付け程度になっているシンセの音色も清涼感を表現するための重要なスパイスです。
決して前面には出す、付け合わせのフルーツのような存在感のおかげで歌とアンサンブルのバランスがとれています。
当時はまだメロディアスハードというジャンルは存在しませんでしたが、発表された時代が時代ならそのジャンルの代表格として紹介されたことでしょう。
残念ながらレーベルが望むセールスが打ち出せずバンドは解散に追い込まれてしまいますが、全米制覇の野心に燃えた若者達が遺した宝石のように煌めく名曲です。
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