イングヴェイ・マルムスティーン / ヘヴン・トゥナイト1988)
1984年にソロ活動を開始したスウェーデン出身のギタリスト。
1988年に発表された4枚目のアルバム[Odyssey]の3曲目に収録されています。
ヘヴィメタルに高度なテクニックを駆使したクラシカルな速弾きを取り入れ、多くのフォロワーを生み出した伝説のギタリストです。
[Alcatrazz]のメンバーとして来日中に日本限定でリリースしたソロアルバムが世界中で話題となり、ソロ活動を開始します。
前作の[Trilogy]は全米チャートで44位を記録する傑作アルバムとなって順風満帆な活動に見えましたが、シンガーのMark Boalsが音楽活動を休止したいと申し出て脱退してしまいます。
新メンバーとして加入したのは後期[Rainbow]で活躍し、バンド解散後はソロで活動していたJoe Lynn Turnerでした。
彼のソウルフルな歌声をフィーチャーした本作は、発売されるや否や全米40位以内を18週キープする、キャリアの中で最もセールスで成功した作品となりました。
その中から、[Van Halen]風のラジオで流しやすい曲を狙う逆の意味で実験的なナンバーがこちらです。
いきなり、重厚なコーラスのアカペラから始まったり、ギタープレイを普段よりも控えめにして歌の伴奏を担っていたりと、驚きの作風です。
メロディラインもこれまでの北欧特有の哀愁漂うものから、Joe Lynn Turnerが歌うことを想定した明るく爽快感溢れるものに変化しており、アメリカでのヒットを本気で意識しているように聞こえます。
結果的に多くのリスナーからの支持を受けてヒットシングルとなったことからも、親しみやすいキャッチーなメロディを全面に出す試みは大成功しました。
ただ、これまでの作品で自分が主役で歌が伴奏だとばかりに派手なプレイを連発していたギターが控えめになったことも理由が存在します。
アルバムの制作中に運転する車が大木に激突し、一時期は心肺停止の重体に陥るほどの命に関わる交通事故を引き起こしていたのです。
後遺症として腕を動かす機能すら失いかねない大怪我でしたが、懸命なリハビリの末に復帰を果たしました。
事故の影響から完全に回復し切れていない状態で臨んだレコーディングであるため、[Far Beyond The Sun]のようなプレイの再現は困難と感じたためか、大味でワイルドなプレイが目立ちます。
そんな自身の変化に合わせて、あえてヒット曲を狙うチャレンジをしたのではないでしょうか?
動機はどうあれ、結果的に表現できるジャンルの幅が大きく広がりました。
その後の活動では歌を主体としたメロディアスな楽曲も発表していくようになりますが、間違いなくその布石となった名曲です。
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